Technology
を利用した数学教育の実践報告・研究成果の発表と,これから授業にTechnology
を活用していこうと考えておられる先生方への講習会を兼ねたT3
Japan 第10回年会を川崎の洗足学園中学高等学校で開催いたします。
「ゆとり教育」と銘打ってはじまった新学習指導要領の元、授業時間数は削減され、内容も軽くなりました。その後、学習指導要領はminimum
standardであるということから多少の現場の裁量権が認められているものの、それほど実践されていないのが現実ではないでしょうか。
「OECD生徒の学習到達度調査」(PISA)、「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS
2003)などの結果から、日本の子どもたちの学力低下が論じられています。授業時数の増加や総合学習の削減など、これまで教員が蓄積してきた教育改革の実践を覆す動きも出てきています。
われわれ現場の教員は、このようなことに振り回されることなく、目の前の生徒にとって有益な授業をしていかなければなりません。また、したいと思っているはずです。従来の典型的授業、すなわち、教師主体の講義、演習、テストというスタイルは、生徒たちは受身の状態に陥り易く、自分で考えて何かをするということは少ないでしょう。このことから脱して、生徒たちの自主的学習を先生方は望んでおられると思います。その1つの方法として、テクノロジーの活用が考えられます。グラフ電卓はまさに学習内容そのものを助ける道具といえます。数学が得意な生徒や、理解レベルが高い生徒は、教師が強制しなくてもより深い数学へと自らを誘導します。一方、数学が不得意、理解レベルが低い生徒は、試行錯誤のなかでさまざま「自然な」気付きが生まれ、理解に結びつく助けとなります。いずれにしても、生徒のために授業をする教師側にとって、“どのような授業をしたいか”への明快な考えがあるとき、テクノロジーに限らず、あらゆるものが道具として活用できるということではないでしょうか。
現在、多くの学校で使用されているグラフ電卓は、教師の強い思いから、開発されたものです。今から、15・6年前、米国TI社で、最初の教育用に特化されたグラフ電卓が開発されました。すなわち、グラフ電卓は、教育者自らが開発に携わった教具なのです。よって、おそらく、先生方が何の拘束もなく、「こんな授業をやってみたい」、「こんなことができればいいな」、「こんなふうに生徒にみせられたらな」と考えられることの多くは、この道具で実現されることでしょう。また、逆に「こんなこともできるんだ」という先生方の新たな発見が、未来のよりよい授業を作っていくことでしょう。
先生方の間でよく耳にする言葉に、「大学受験が変わらなければ……」ということがあります。このことが理由のひとつなって、なかなかテクノロジーを使った授業に踏み切れない先生方も多いと思います。しかし、そうした状況でも、授業改革の挑戦をしている学校も多々存在します。学力が上位であれ下位であれ、生徒の学習に向かう態度が肝心ではないでしょうか。テクノロジーを使った授業実践では、学力の上位・下位にかかわらず、学習を自分ごとに感じているという報告がされています。すなわち、主体的な態度で授業に臨んでいるといえるでしょう。道具は使いようです。同じ機械がいわゆる進学校でも使われ,そうでない学校でも使われています。肩肘張らず,気軽に使い,子供たちに任せてみることです。先生より生徒のほうが道具を使いこなすのは早いようです。毎時間使う必要もないでしょう。必要なときに必要な場所で使うのです。コンパスや三角定規をと同じです。
今回会場校である洗足学園も、テクノロジーの利用に関して頻繁に行われているわけではありません。グラフ電卓の授業もこれから本腰をいれてやっていこうとしている段階です。ぜひ、皆さん生徒の輝いている目を見るために、一緒に勉強しましょう。川崎でお待ちしております。
洗足学園 数学科主任 蕪木 慎也