T3
Japan
Representative |
秋山 仁 (東京理科大学) |
Conference
Leader |
勢子公男 (東京理科大学) |
Program Organizer |
半田 真 (東京女学館中学・高等学校) |
Program
Organizer |
原 健太郎(埼玉県立狭山緑陽高等学校) |
WWT3
Coordinator |
渡辺 信 (生涯学習数学研究所) |
T3
Japan
Administrator |
中澤房紀 (Naoco
Inc./鶴見大学) |
時の流れを見据えた数学教育を
最近、“学校で数学を必修科目にする必要があるのか?”というテーマの議論をよく耳にする。たとえば、ある新聞で前川喜平元文科事務次官が、「高校中退理由の約50%が授業についていけないことであり、特に数学が多い。高校卒業資格に現行の内容の数学を課す必要があるだろうか?」という主旨の意見を述べた記事があった。この記事を受けて、マツコデラックスさんはTVで、「数学に限らず、多くの人にとって今の高校で学ぶ内容は、社会に出た後必要とされる技能とミスマッチしていると思う」とコメントしていた。
私は職業柄、数学の様々な側面を知っているので、広く多くの人にとって数学の学びが社会に出た後も大いに役に立つものになると確信している。しかし、現行のように次々と数学知識を詰め込むだけでは、多くの人々に有意義とは思ってもらえないだろう。数学を学べば、ものごとを客観的に分析でき、思考力を磨け、生活のいろいろな場面で大いに役立つことを人々が実感できてこそ、学生時代に数学を学ぶ必要のある科目になると思う。生活上、円の面積を求める公式を使う場面に出会わなくても、その公式を導くために用いられる考え方はしばしば必要になる。また、複雑な計算の背後に潜む規則を電卓を片手に発見するという経験は若者たちに発見の意欲を燃え上がらせるに違いない。私も含め、数学教育関係者は、将来、数学の知識自身を使わない人たちに対して、電卓やパソコン、ICTなどを駆使して数学的分析力を強化する方法やカリキュラムを、今こそ本格的に開発することが大切だ。
また、今の小学6年生が大卒となる2030年頃、人間の知能に近いかそれを超える汎用AIが登場するシンギュラリティを迎える。それ以降、第4次産業革命が本格的に始まり、人の手による現存の約9割の仕事がAIロボットに取って替わられるという。異言語の通訳も厄介な計算や数学的処理も人の脳を介さず、AIが行えるようになる時、人間が必死に学んで、身につけていなければならない能力は何か?それは、自分の考えや意見をしっかり持ち、かつ、他人との議論を通して互いの考えを深め合う柔軟な思考力、他人が興味をもつ話題の発見力、前例のない事柄を予想し、想像的に考える発想力だと私は思う。激しく巡りゆく時の流れを見据えた教育をみんなで真剣に考えていかなければいけない。
東京理科大学 教授
東京理科大学 特任副学長
教育支援機構 理数教育センター長
秋山 仁
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